C・H・I・Y・A



C・H・I・Y・A 目次

「C・H・I・Y・A」は世界初(にしておそらく最後)のタブブラウザ小説である。
2ch ソフトウェア板の 【みんなで】DonutP Part5【おなにーしようぜ】スレッドで発表された。
このスレッドの名物コテハン、千谷氏を題材にしたものである。 http://potato.2ch.net/test/read.cgi/software/1058777117/133-263 スレッドが読めない場合はこちら
Webの挾間に埋もれていくには惜しいため、ここに転載するものとする。
転載に当たり、作者氏自身が指摘した誤字を修正し、最初の投稿をプロローグとした。
内容についてはタブブラウザ推奨委員会の関知するところではないので、俺に文句を言わないように。

作者氏の投稿 作者氏の投稿。裏設定など。



C・H・I・Y・A 『プロローグ』


ちやたんは実は女。
少し暗めの眼鏡っこ。二十歳。
幼なじみの柏木にDonutPスレッドを荒らすように頼まれる。
自分が不美人であるというコンプレックスを持っており、こんな自分とつき合ってくれる
柏木には頭が上がらず、いやいやながらスレッド荒らしを引き受ける。

「そんな、そんな恥ずかしいこと書き込むの……?」
「そうだ、下品であればあるほどいい」
「嫌だよ、私。どうしてそんなことしなきゃいけないの?
 …やすゆきが作ったスレイプニルはすごいものなんでしょ? そんなことしなくても…」
「黙れ! ちや、俺は誰だ!? ええ? 俺は誰だよ!」
「(びく!) さ、最高のタブブラウザ、スレイプニルを作った天才、柏木やすゆき…」
「そうだ! 俺は天才だ。だからお前みたいなブスは天才の言うことに従ってればいいんだ!」
「(…スレイプニルの人気が出てきてから、やすゆきは変わった…。前はこんなこと言う人じゃなかったのに…)」
「わかったのか、どうなんだ!」
「う、うん。分かった…」

ちやたんは心に浮かぶ疑念をうち消しつつ、今日も書き込む。
「あの…、み、みんなでおなにーしませんか…」

次回、Cuam氏の変死体が発見されたことを知るちや。そして柏木は一人呟く、次はx08zだ…、と。
C・H・I・Y・A 第12話『雪は心に降り積もり』


C・H・I・Y・A 第12話『雪は心に降り積もり』


やすゆきが電話をしてる。相手は何度かあったことがある、ドラウプニルって人。
「で、死体からはなにも出てないんだな? …そうだ。
 二年も前の死体だ、何も出てこないさ。 …五月蠅ぇな、がたがた騒ぐな。安心しろ。
 それで、オヤジの行方は? …泣き言なんて聞きたくないね。さっさと探せ!」
最近のやすゆきはいつも怒ってる。
「ちっ、使えない野郎だぜ。俺の周りはあんな連中ばっかりだ」
私の方を見ながら言う。使えない野郎、に私も入っているのだろう。
「おい、ちや」
「なに?」
「脱げよ」
「え?」
「気が利かない奴だな。彼氏が不機嫌なら慰めてあげようとか思うもんだろ?」
「待ってよ。私、今日はそんなつもりじゃ」
「いいから脱げよ!」(ビリ!)
「や、やだ。こんなのやだよ!」
「お前は人より、ちょっと胸がでかいぐらいしか良いところが無いんだからよ、その長所を生かしやがれ!」
「わ、分かったから、シャワーだけでも…」
「シャワーなんぞ後でいい。
 …あぁ!? なんだこのだせぇ婆ブラは! 俺が前に買ってやったのをなんで付けてこないんだ!」
「だから私、今日はそんなつもりじゃ…。それに、あんな派手なの、恥ずかしくて」
「あれは窓の杜で大賞をとった記念に買ったやつだぞ。俺の功績を否定する気か!」
「どうしてそうなるの? ね、やすゆき、ちょっと落ち着いて聞いてよ」
「もういい! ヤる気が失せた。ちょっと出てくる」

何時の頃からだろう? 私は心に雪を降らせるようになった。
辛いことや嫌なことを、全部雪の下に埋めて……。いつまで自分を騙し続けるのだろうか……。
「みなさん、おなにーをしませんか…」

次回、UH氏に取り入る柏木。その代償に彼が提示した物は…。
C・H・I・Y・A 第13話『知識の代償』


C・H・I・Y・A 第13話『知識の代償』


「ああ、UHさん、俺っす、柏木っすよ。お久しぶりです」
私がシャワーを浴びるのを見計らったように、やすゆきが何処かへ電話をかけ始める。
「最新のどなぴー、使ってみたっす。あれ、凄いっすね。
 …ほら、IEの拡張ツールバーの取り込みですよ。いやぁ、あれどうやってんすか?」
頭からシャワーを浴びる。やすゆきの声が聞こえなくなる。
体はこんなに濡れているのに、どうして心はからからなんだろう……。

「駄目なのは分かってますけど、そこをなんとか…。オープンソースはドーナッツの理念じゃないですか。
 多少の謝礼はしますよ。……はぁ、怒ることないじゃですか。こっちはただ…。
 ……。
 あ、そうだ。それなら、女どうです? 女。
 眼鏡っこで巨乳。セーラー服、ブルマプレイも全然オッケーっすよ?
 …や、やだなぁ。イメクラの話ですよ。イメクラ。
 …あぁ、そうですか。…じゃ、この話はいいです。 
 そういえば、Cuamさんの死体見つかりましたねぇ。ひどいっすよねぇ。
 誰が殺したんすかねぇ…」

私が浴室から出る直前に、やすゆきは電話を乱暴に切った。じろりを私をにらむ。
「お前がスレンダーで、お嬢様っぽかったらな」
「え? なんのこと」
「なんでもねぇよ! 使えねぇ奴!」

よく分からないけど、凄く悲しくなった。
やすゆきが知識の代償として私を差しだそうとしたことを、この時の私は全く知らなかった。
しかし、のちに嫌でも知ることとなる……。
「みなさん、私とおなにーをしませんか」

次回、UH氏は有る人物と連絡をとり、柏木の調査を依頼する。「Cuam氏を殺したのは奴だ…」
C・H・I・Y・A 第14話『終末の序曲』


C・H・I・Y・A 第14話『終末の序曲』


「よ、俺だ。UHだ。
 …いや、お前の『ノッチです』はもう聞き飽きた。今更デンジャラスも無いだろ。
 頼みたいことがあるんだがな。どうせ暇だろ?
 …だって、お前んとこ、ニュースしか更新してないじゃないか。…怒るなよ。
 …本題だがな。
 Cuam氏の遺体が発見されたこと、知ってるな? 殺ったのが誰か、分かったぞ。
 死の原因が、事故か自殺か他殺か、まだなにも分かってないのに、
 『誰が殺したんでしょうか?』なんて言った馬鹿がいる。そいつだ。
 そう、スレイプニルの作者だよ。知ってるだろう、スレイプニルのカスタマイズ部分は
 Cuamのをそのまんまパクってることを。Cuam氏本人が反応しなかったから、みんなも黙ってたが
 死んでたんなら、反応しようもないわな。…そうだよ、柏木だ。奴には動機がある。
 …無論、証拠はなにもない。多分見つかることも無いだろうな。
 だが俺は確信があるよ、奴だ、間違いないね。
 知っての通り、俺のDonutPのプロキシリスト切り替えはCuam氏から伝授されたものだ。
 パクリじゃなくて直接にな。俺はCuam氏には恩がある。仇を討ってやりたい。
 …うん、とりあえずは奴の交友関係を洗ってくれ。…そうだ、なるべく早くな。
 …俺? ああ、Pの新機能について聞いてきたが、断った。
 いや、多分大丈夫だと思うんだが。…そうだな、一応気をつけよう。
 じゃ、頼んだぜ、『ハンタァ』」

UHはふと思った。
「眼鏡っこで巨乳か…。好みじゃないが、惜しかったかな。
 どうせいつかパクられるんだし…」

次回、ちやは邪教の信徒と思い込まされていたDonutPユーザーの、意外な暖かさに触れる。
C・H・I・Y・A 第15話『私の名前は、ちや…』


C・H・I・Y・A 第15話『私の名前は、ちや…』


今日も私は同じ書き込みをする。
「みなさん、おなにーしませんか?」
正しいことかどうか、分からない。でもやすゆきに言われたから。

「千谷ってなんて読むんだ?」
ふと、こんな言葉が私の目に入った。ここの人達は悪魔のブラウザDonutPの信者で
キチガイばっかりだって聞いてる。実際、私はいつも罵倒されてた。

「ちがや」
「せんたにだろ」
「『せんずりこく』を縮めてせんこく」
「それだ!」

違う! それはちやって読むの! でも、奴らには反応するなって、やすゆきには言われてる。
でもでも…。せんこくだけは嫌…。そうだ、メール欄に書こう。

『私の名前は、ちや…』
「ちやたん、キター!」「スクリプトじゃなかったのYO!」「ちやは実は女」「ちやたん、年はいくつ?」
瞬く間にすごいレスが入る。なんだかとても暖かい感じ。この人達、悪い人じゃ無いの…?

「ちや! 奴らには反応するなって言っただろ!」
「でも、名前を言っただけだし…。それに、あの人達…」
「黙れ! いいか、お前は俺の女だ。俺だけの女だ! 他人の言うことなんて無視しろ。
 俺の言うことだけを聞いてればいいんだ! 俺にだけ従ってればいいんだ! 分かったか!」
「う、うん…」

あのスレッドの人達、なんだか暖かい…。でも、「俺だけの女だ」って言われて、少し嬉しい。
「みなさん、おなにーしませんか?」

次回、オヤジ捜索を諦めた柏木は次のターゲットを選ぶ。「障害は潰しておかないとな…」
C・H・I・Y・A 第16話『ライバルは奴だ』


C・H・I・Y・A 第16話『ライバルは奴だ』


「ノッチです! …ノリが悪いよ、UH。…はいはい、本題に入るぞ。
 柏木はドラウプニルを使って、随分長いことx08z氏を追ってたようだが、
 最近諦めたらしい。…どうも他の奴を標的にしたようでな。…いや、誰かは分からない。
 お前かもな。とにかく調査は続ける。どうも奴の周囲にいるのはドラウプニルだけじゃないみたいだ。
 ああ、ちやって娘は問題ないだろ。大人しそうな娘だが、どうして柏木なんかとくっついてるのかな」

「Bug…、ツリーとスクリプトをパクった以上、もう相手にする価値はない。
 MDI…、ふふふ、かつては最高のライバルだったが、戦隊もののビデオとスパルタンXのソフトを送りつけたら
 すっかりヒッキーになったみたいだな。意志の弱い奴。
 DonutP…、IEの拡張ツールバーサポートはやはり欲しい。保留。
 Blue…、上下左右にタブか。ふ、タブの複数行などいらん。タブリストがあれば充分だ。
 Luna…、お笑いだよ、スレイプニルをパクってどうすんだ? パクりが本家に勝てるかよ」
柏木は無論、自己矛盾に気づいていない…。自分だけは、スレイプニルだけは特別と思っているのだ。
「fub_net…、クセが強すぎさ。ソフトは万人に受けないとな。
 DonutRAPT…、お前もだよ。だからPに勝てないんだ。
 DonutL…、ふむ…。この軽さは捨てがたい。が、最近の初心者は馬鹿な上に最新のPCを持っているから
 軽さより機能の多さで攻めた方が騙し安いな。ふ、スレイプニル路線に誤りはない。
 ぶら。…、IE互換お気に入りでは頑張っているが、所詮イロモノ。アイコンと名前だけで押してるようなものさ。
 アイコンなら、俺のスレイプニルも、性欲を刺激するデザインにしたしな。

 ……。
 やはりDonutPか…。UH、金でも女でも動かん、やっかいな奴。
 Suuを使うしかないかな。くくく、UHも馬鹿な奴だ。大人しくソースを渡せば良かったものを」

次回、ノッチを襲う黒装束の男達。「ぷにぷに〜!」 そして、そこに割り込む第三の男が。
C・H・I・Y・A 第17話『強襲、Suu[すぅ]』


C・H・I・Y・A 第17話『強襲、SUU[すぅ]』


*** しばらく、ちやたんは登場しませんので、読み飛ばしてもオッケー ***
深夜、密かにドラウプニルの跡をつけるノッチ。唐突にノッチの周囲を黒装束の男が取り囲む。
「ぷに〜!」「ぷに、ぷに〜!」
「う、うわ、なんだお前ら!」
「ぷに!(ドガァ!)」
「ぐはぁ! 何しやがる! そうか、お前ら柏木の…」
ドキャ! ボゴァ! ドッキューーン! ビルの側面に叩きつけられるノッチ。
肋骨数本にヒビが入ったのがわかる。
「やばい、マジで殺す気か。ま、まさにデンジャラス・ノッチ!」

「待ちな!」
「ぷに!?」
ビルの屋上から飛び降りてきた男が、ノッチを庇うように立ちふさがる。
「柏木の隠れ組織が、大っぴらに派手なことしてんじゃねーかよ」
「…ぷに」
「お前ら、SUU[すぅ]だろ? これ以上は俺が相手をしてやんよ」
「ぷに!(かかれ!)」
「は! 雑魚どもが! 喰らえ、必中神槍拳!!」
「ぷには!(どさ)」

黒装束の男達は倒された仲間を抱え上げると、闇の中に消えていった。
「よう、手酷くやられたな」
「あ、あんたは…」
「俺の名はグングニル。『ある人』の命令でな。柏木を探ってる。ま、お前と同類さ。
 しかし、お前も、お前の雇い主も素人だな。柏木を甘く見すぎだぜ。
 奴らはSUU。Sleipnir unofficial userだ。柏木配下の武闘集団だ。影の汚れ役だな」
「『ある人』…?」
「お前も名前は知ってるはずだ。お前らを引き合わせたいが…、先に病院だな、こりゃ」
「う、げふっ。ハンタァも形無しだぜ…」

次回、ノッチに呼び出されたUHは、思いがけない人物に出会う…。
C・H・I・Y・A 第18話『罠』


C・H・I・Y・A 第18話『罠』


「(ピロロロ)お、メールか。…ノッチから? なんで直接かけてこないんだ?
 …『UH、やったぞ、偶然からだがx08z氏を発見した! お前に会いたいと言ってる。
 ○△町の□凹ビルの前まですぐに来てくれ。ちなみにお前の部屋は盗聴されてる可能性がある。
 このメールを読み上げたりすんなよ? じゃ』
 x08z氏が? ってか、盗聴? どうも物騒になってきたな。
 しかし、Moonの作者のx08z氏が見つかるとは。スレイプニルの発表後に、逃げるように姿を消したからな。
 Cuam氏が殺されたと察したのだろうが…。しかし、柏木を追いつめるのに力を貸してくれそうだな。
 会いたいというのだから、あちらもその気だろう」

○△町の□凹ビル。
「随分、辺鄙な所だな…。おーい、ノッチ、何処だ!」
「ノッチ君は今頃病院さ」
「! だ、誰だ?」
「俺だよ、柏木だ」
「な…! なんでお前が…」
「俺がお前を呼びだしたからだよ、こいつでな」
襲撃されたノッチは、携帯電話を落としていた。今、それが柏木の手にある。
「ノッチを襲って、俺を呼びだして、どうするつもりだ?
 DonutPのソースが目的か?」
「それも、ある。が、メインの目的は、お前の命だよ」
「な、なに…」
「MDIはコケてくれたが、依然としてDonutPはスレイプニル普及の障害だ。
 スレイプニルがタブブラウザ界を制し、シェアウェアに移行するのにDonutPは邪魔になる。
 配布を停止しろと言っても、聞いてはくれないだろ? じゃぁ、こうするしかないじゃないか」
「正気か! 軽々しく人を殺すなどと」
「一人殺すも、二人殺すも同じ事さ」
「…やはり、貴様がCuam氏を…!」
「逃げられはしない。…jin-ren、殺れ」
「ぷに〜! …八脚神馬蹴!!」

次回、UHの部屋からDonutPのソースを入手した柏木は、ちやに有ることを頼む。
C・H・I・Y・A 第19話『重すぎるもの』


C・H・I・Y・A 第19話『重すぎるもの』


「もしもし? ソースは見つかったか? …よし。カスタム所も書き換えておけ、
 『愛するあの娘に振られたので、旅にでます。by UH』として、Pの配布も中止しろ。
 部屋は荒らすな。あとは時限式のHDD抹消ウィルスでも仕込んでおけ」
やすゆきが久しぶりに笑いながら、ドラウプニルさんに電話してる。
「ち〜や! どうだ、久しぶりにドライブにでも行かないか?」
「え? こんな時間に?」
「こんな時間だからいいんだよ、さぁ!」

人気のない山奥、車のトランクからカーペットでぐるぐる巻にされた、異様な物体を引き出し
手早く掘り起こした浅い穴に埋める二人。
「ふぅ、疲れたな」
「さっきのあれ、なんなの?」
「く、くっくっく、あれはな、死体だよ。UHのな」
「UHって、DonutPを作った人…」
「そうさ、Pの最新機能に関して、俺がソースを見せてくれって言ったらな。
 ちや、お前を抱かせるなら教えてやる、なんて言ったんだ。俺は怒ったね。
 ついカッとなって殴ったら、打ち所が悪かったみたいで、死んじまった。ま、自業自得さ」
「ひっ…」
「おいおい、なにをガタガタ震えてるんだ? お前のためにやったんだぜ?
 それにな、もうお前も死体遺棄の共犯じゃないか」
「私の…ため…私も…共犯……」
「はは、震えが止まらないか。じゃぁ、暖めてやるよ」
「え…、や、やだ。こんな場所で」
「たまには野外もいいじゃないか、なぁ?」
「ん……あ…」

人の死というものが、どっしりと私の心にのしかかる。その重みで、私の心は壊れてしまいそう…。
やすゆきは、もう必要ないといったけど、私は惰性で書き込みを続ける…。
「みなさん、私と…お、おなにーをしませんか…」

次回、柏木はHideと交渉を持つ。その代価として差し出したものは…。
C・H・I・Y・A 第20話『現実となった悪夢』


C・H・I・Y・A 第20話『現実となった悪夢』


やすゆきが、いつかのブラジャーを着けて来いといった。凄く恥ずかしいけど、仕方がない。
待ち合わせは、午後9時に×○△前公園の、トイレの裏…。どうして、こんな所に?
また、外でするのかな…。嫌だな…。

「あの、ちやさん? ぐふぐふ」
「え? あ、あなた誰ですか?」
「やだなぁ、聞いてないんですかぁ? Hideですよぉ」
「い、いえ、あなたなんか知りません」
「えー、まぁいいかぁ。その方が面白そうだしぃ」
そういうと、その人はいきなり私に抱きついてきた。私の胸に顔を埋め、激しく呼吸する。
「あー! 眼鏡っこぉ! 巨乳のぉ、眼鏡っこぉ! も、萌えーー!!」
「い、いやぁ!! 離して、やめてください!」
「嫌よ嫌よも好きのうちって奴ぅ? ぐふふ。
 あんたはさぁ、俺のLunascapeのソースと引き替えに俺に抱かれることになってんだよぉ」
「! う…、嘘。嘘よ…」
「なら柏木に聞いてみればぁ? ああ、すっげぇ柔らけぇよ!」
(あのブラジャーを着けて来いって言った。でも来たのは、この人だけ…。
 やすゆき、嘘って、嘘って言って…。そうしないと私…)
「えぇー、無抵抗ですかぁ? じゃ、そろそろ生揉みと行きますかぁ」
ビリリ。シャツが破かれて、あのブラジャーが露わになる。黒くて、すけすけの…。
「うっひゃぁ。真面目そうな眼鏡っこが、すけすけの黒ブラだよぉ! ぁあ、たまらねぇ〜!」
ブラジャーの上から、べろべろと舐め出す。臭い息を吐きかけながら。
でも私は、焦点の合わない目で、夜空を、星も見えない夜空を見ているだけだった。

ビキっと、心の何処かでなにかがひび割れる音がした。
心が、私の心が壊れ始めたのが分かる。いつかバラバラに砕け散るのだろうか。
その時体はどうなるんだろう。

次回、意識を取り戻したちやは、隣に座る異形の影に驚く。
C・H・I・Y・A 第21話『クラッシュ・ゴールデンボール』


C・H・I・Y・A 第21話『クラッシュ・ゴールデンボール』


目を開けると、ベンチに横になっているのが分かった。
体を起こすと、掛けてあった毛布が滑り落ち、むき出しの乳房が露わになった。慌てて毛布を引き上げる。
「目が覚めたブヒ?」
はっと振り向くと、そこには一人の…、いや、一頭の…ブタが…。
「き、きゃあああぁ?」
「驚くなブー。『貞操』の恩ブタに失礼だとは思わんかブー」
「え、あ、あえ? …その、あなたは…その、ブタ、さん、ですか?」
「俺がブタに見えないというなら、あんた、相当目が悪いブヒ」
「いえ、ブタさんに見えます。…ええっと、私、助けて貰ったんでしょうか」
「そこを見るブヒ」
ベンチの裏側のは、白目をむき、泡を吹き、全身を痙攣させている男、Hideが横たわっていた。
「こ、この人、どうしたんですか?」
「あんたにのし掛かってる所を、後ろから蹴りを入れたブー。
 運良く、万が一、睾丸が破裂してないなら、この先も男として生きられるかも知れないブー」
「は、はぁ」
無論、同情する気などは全く起きなかった。
「わ、私そろそろ帰ります」
「その格好で? 上着はびりびりだし、ブラジャーはよだれでべちょべちょだブヒ」
「あ…」
「仕方がないブヒ。俺のマントを貸すブヒ」
「あ、これマントだったんですね」
「ついでにこれもやるブー」
なぜか、そのブタは純白のブラジャーを身につけていた。フロントホックのそれを外すと、私に渡してくれた。
「お似合いだブー。これでお前も会員だブー」
「え?」
「なんでもないブヒ。いざ、さらば」

部屋に戻ると、やすゆきがPCを前に、なにか打ち込んでいた。何処にいってたんだ? とも
遅かったな、とも言われなかった。私の心の亀裂は、大きさを増していった…。

次回、柏木はついにSleipnir2を完成させる。しかし、発表直前にとんでもないニュースが。
C・H・I・Y・A 第22話『オヤジ、再び』


C・H・I・Y・A 第22話『オヤジ、再び』


「ワシの不手際でUHを死なせることとなった。謝罪の言葉もない。しかし、あそこまで性急な手段をとるとはな…」
「いえ、x08zさん、あなたのせいじゃないですよ。多分、俺が携帯を落としたせいで…。く、UH…」
「ノッチ君。ワシらも拙速に行動する必要がありそうじゃ。協力してくれるかね」
「なんでも言ってください。でもなにか策があるんですか?」
「ほぉほぉほぉ。柏木から逃れて一年半、ワシが無為に過ごして来たと思っておるのかね?」

「みろ、ちや! ほぼ完成したぞ、Sleipnir2が!
 DonutPから拡張ツールバーサポート、Lunaからはマウス制御やお気に入りエディタの一部、
 Bugからはダウンロード支援ソフト連携、fubからはOpera風キーバインド、エトセトラ、エトセトラ。、
 既存のタブブラウザの全てを取り込んだと言って過言ではないな! まぁ多段タブはまだだけど。
 明日のタブブラウザ界はこいつのニュースで持ちきりだぜ。PやLunaのサイト閉鎖も拍車を掛けるだろうよ。
 しかし、配布直前までは隠しておかないとな…、シェアウェア化することは!」

しかし、次の日、タブブラウザ関連のサイトを見回った柏木は愕然とする。
トップニュースになっていたのは、『UH、失恋の果ての逃走』でもなく『Hide、女になります宣言』でもなく
ましてや『Sleipnir2、発表目前』のニュースでもなかった。
『オヤジ、再び! 一年半の沈黙を経て、奴が帰ってきた。再び望月の世を手に入れるために!
 Crescent Moon.
 かのMoon Browserが大幅リニューアル。DonutRの犬屋氏の全面協力を受け、
 プラグインに依って必要な機能だけを拡張する、軽さと機能を兼ね備えた最強ブラウザ、ついに登場』
ブラウザハンタァを初めとする各サイトにスクリーンショットが掲載され、大絶賛されていた。
しかし、実行ファイルはどこにも配布されておらず、真偽を確かめる術もない。
「これほどのものが、フリーで配布されてはSleipnir2のシェアが…。糞!!」
柏木はドラウプニル、jin-ren、そしてSUUの全てのメンバーを招集し、命令を下す。
「なんとしても、Crescent Moon配布前にx08zを殺る」

次回、ついにオヤジの居場所を突き止めた柏木。その前に立ちふさがる者達。今、決着の時。
C・H・I・Y・A 第23話『終局のロンド』


C・H・I・Y・A 第23話『終局のロンド』


柏木達はついにx08zこと、オヤジの居場所を突き止め、そこに急行する。
しかし、それはオヤジの配下グングニルの巧みな情報リークによるものだった。
x08z、グングニル、いまだ包帯姿のノッチの前に、柏木一行が立ちふさがる。
「見つけたぞ、x08z! よくもこの一年半、逃げ回っていたものだ」
「ほぉほぉほぉ。逃げていたのは半年だけじゃ。残りの一年は、お前を倒すために色々と算段しておったわい」
「俺を倒すだと? たった3人でか? 笑止。逆にお前をぶち殺し、新Moonの発表を止めてやる。jin-ren、x08zを殺れ!」
「ぷにー!!」
「おおっと、お前の相手はこのグングニル様だよ。お前の神馬流と、俺の神槍流、そろそろ決着をつけようぜ!」
jin-renとグングニルの壮絶な打撃戦。しかし実力は互角。それを見取った柏木は残りのSUU達を動かす。
「ぷに〜!」「ぷにぷに〜!」「ネトランマンセー!」「ジェイわ〜ど!」「熊研〜!」
「算段しておった、と言ったろう? すなわちお前の手駒を全部集め、それを一気に叩き潰すために」
x08z氏を指を鳴らすと、柏木とSUUを取り囲むように多数の人影が現れる。
「(ばい〜ん)俺のエレキ・ウクレレを聞け! レイヴオーン!!」
「透明化も隠蔽も自由自在、我こそこそこそ野郎、ニンニン!」
「右手にIE、左手にGecko、喰らえJanusダブルパンチ!」
「まぁまぁ、みんなオープンに行こうよオープンに。ドーナツでも食べながらさ」
「エロマスター、Bug様に全て任せろ! 世界のエロは俺のものぉ!」

「こいつらっ・・!」
水面下に雌伏していたx08zは、各タブブラウザ作者達を密やかに味方に引き込んでいた。
「…まぁ。変なのも付いてきたようだがのぉ」
「怪我をしても、このスーパースクリプトドクターKに任せろ」「おーほほほ、この北欧の歌姫の最速の歌をお聴き!」
「あんぎゃー!!」「ぷに? この怪獣はなにぷに?」「誰だぁ! モジラを呼んだのはぁ!!」
「お前ら、この桂様のものを買えー!」「折伏、折伏、キンマンコー!」
「くくく、Bugさん。ことセーラー服に関しては、この僕に任せてください。セーラー捕獲網の名にかけて」

未曾有の混乱の中、柏木を拳銃を取り出すと、x08z氏に向けた。

次回、銃口の前に立ちふさがる一人の人物。そして柏木は…。
C・H・I・Y・A 第24話『ちや』


C・H・I・Y・A 第24話『ちや』


「結局、お前さえ死ねば全てが解決するんだ」
その銃は中国人プログラマに渡したスレイプニルのソースと引き替えに、人民軍から横流しされたものだった。
冷たい銃口がx08z氏に突きつけられる。周囲の喧噪が収まり、時が凍り付いた。
「やめてぇ!」
横合いから、一人の女性が柏木の腕を、拳銃をその胸に包むように抱きかかえる。
「ちや!?」
「やめて、もうやめて、やすゆき!」
「なんでこんな所に…。どけ! 手を離せ!」
「駄目よ! もう、これ以上罪を重ねないで…。ねぇ、警察に行きましょう?」
「馬鹿なことをいうな! ちや、お前も死体遺棄の共犯で捕まるんだぞ?」
「構わない。…ううん、あなたの犯したこと、全ての共犯になるから。
 一緒に死刑でも、終身刑にでもなるから」
「く…! お前…。いいから、どけ! そいつを殺らなければSleipnir2は!」
「やすゆき!! …私とスレイプニルと、どっちが大事なの…」
今まで一度も聞かなかった。いや、聞けなかった。その回答が怖くて。
でも聞くべきだった。聞かなければいけないことだった。こうなる前に…。
「答えて、やすゆき!」
「うるせぇ! スレイプニルに決まってるだろうが! どれだけの手間と時間をあれに注ぎ込んだと思ってるんだ?
 あれの完成のためにお前の体まで売り渡したんだぞ!」

…壊れた。私の心は壊れてしまった。 心が壊れたのなら、もう、体も、命もいらないだろう。
私にはやすゆきしか居なかった。でもそのやすゆきが私を要らないというのだ。
私という存在は、無意味で無価値になったのだから。

「…そう…。じゃぁこのまま私を殺して。その上で誰でも殺すといいわ」
「な、なにを言ってるんだ?」
「せめて、あなたの手で…」
トリガーに指のかかった柏木の手を、さらに上から包み込む。
自分に死をもたらす冷たい悪魔を、ちやは強く、優しく抱きしめた。

次回、すれ違う二人の夢。
C・H・I・Y・A 第25話『夢』


C・H・I・Y・A 第25話『夢』


ドウン!
鈍い音が響いた…。

誰も私を慰めてくれない。自分で自分を慰めるしか、自分で決着をつけるしかない。
だとすると、これはおなにーなのかしら。自殺することはおなにーなのかしら…。
「みなさん、ちやは最後におなにーをします。もうみなさんと一緒にはできないけれど…」

「ちやーー!!!」
ちやの胸に、赤黒い大輪の花が咲き始めた。口元にむしろ不思議な微笑みを浮かべてちやは倒れた。
柏木がちやを抱きかかえる。しかし、すでにちやはなんの反応も示さなかった。
「はぁああ…! なんで、なんでこんなことを! ちや、ちやー!!」
涙。柏木が涙を流している。
「お前は、お前は俺のものだって言ったじゃないか。誰が勝手に死んでいいなんて言ったよ!
 お前は俺のものだ! 俺だけのものだ! だから俺はお前をどんなことにでも利用したんだ!
 どんなことがあっても、お前は俺のものなんだから!
 そう、俺の持つ、たった一つの『本物』だから!
 俺はお前を、俺が作ったソフトを凄いねって誉めてくれたお前を、ただ喜ばせたくて。
 もっと、喜んで欲しかったから……!
 パクリブラウザのスレイプニルや、その周囲に集まるハエどもなんてどうでもいいんだ。
 スレイプニルが評価され、賞を取って、お前が喜んでくれれば、それだけで俺は!

 …はは、知ってるか? Sleipnir2をシェアウェア化して、その金が入ったら
 田舎に家でも買おうと思ってたんだぜ。前からの俺の夢でさ、そうしたら俺はお前に…」
柏木は銃口をゆっくりと自分のこめかみに押し当てた。
「お前は天国に行ってるのかも知れないし、俺は地獄に墜ちるかもしれない。
 でも、もし生まれ変わることがあったら、また出会うことがあったら、その時こそ、お前に…」

そして、銃声。

次回、終局の後。
C・H・I・Y・A 「エピローグ」


C・H・I・Y・A 『エピローグ』


後日談。ノッチの日記。
「誰にとっても後味の悪い事件は、終わりを告げた。ドラウプニルとSUUは警察に捕まり、事情聴取を受けている。
 jin-renだけは逃げ出して、今指名手配中だ。x08z氏を狙うんじゃないかって、グングニルが警戒してる。
 DonutPの配布は再開されたが、しばらくしたらRAPT氏が全て引き継ぐことになる。
 Hide氏はまだ入院中だが、女として生きていくことにしたらしい。
 Crescent Moonはいまだ開発中。元々、柏木をおびき出すために、
 急遽スクリーンショットだけ作ったものだから、これからが本番らしい。
 俺はまだ通院中だが、そろそろUHの墓参りに行かないと。

 結局、柏木の夢と、あのちやという女性の夢がすれ違ってしまったということなのだろうか。
 有名になり評価されることで、女を喜ばせたいと思った男と、
 有名になんてならなくてもいいから、ただ、ずっと男に側に居て欲しかった女と…。

 いまでもたまに、『みんなでおなにーしようぜ』の書き込みを見ることがある。
 ちやという娘が、柏木に強制されて書き込んでいたという。
 その事情を知らない奴が、荒らし目的でコピペしてるんだろう。
 今となっては、過去ログに残るそれだけが、彼女の生きていた証だ。
 書き込みは『あの日』の前日まであった。どんな思いで書き込んでいたのか。
 柏木に頼まれたこと、それを実行することだけが、
 彼女に、柏木の側に居るという実感を与える行為だったのかもしれない。

 あの書き込みを見るたびに、俺は思う。

 あ〜、俺も彼女が欲しい」

C・H・I・Y・A 〜〜 完 〜〜


作者氏の投稿


適当に始めたので1〜10話は無いです。
最終話までのプロットはできていますが、現実の動静によって変化はあり得ます。
Hide氏も、Lunaのサイトが死んでなければ、こんな汚れ役は…。


C・H・I・Y・Aはこれで終わりです。
23話のfub氏の台詞は「俺の鋼鉄のマラカスを食らいやがれ、レイヴオーン」のほうがよかったかな。
他にも色々と登場人物の性格や台詞で変更したいところとかありますが。
行数制限がきつくて、一話に収まるように、かなり削ったりもしました。

あまりにも救いのない話ですが、要望があれば25話で分岐する、アナザーストーリーを作ります。
ちやたんも、もう少し救われるかも。


要望はなかったのですが、熱が残ってるうちにアナザーストーリーを書いておきました。

矛盾点は色々ありますが、手直しするのもなんなので。
・Pのソースが欲しかったはずなのに、いつのまにかUH殺害になってる。
・LUNAをパクリと馬鹿にしていたのに、ちやを売ってまでソースを入手してる。
・Bugやfubも同じ。しかも最後には作者達は敵に回っている。
・ドラウプニルは、なぜか入沢を名乗ってない。
・Cuam氏殺害>スレイプニル発表>オヤジ逃走の過程が分かり難い。
等々。
裏設定
・jin-renとグングニルは、枝嵯峨(えださが)流古武術の同門。
・ノッチはシティハンターに憧れる自称私立探偵、本質はなんでも屋。「ハンタァ」と呼ばれると喜ぶ。
 副業でブラウザハンタァを管理運営している。

ではアナザーストーリーどうぞ。24話までは同じ、25話で分岐です。


C・H・I・Y・Aアナザーストーリー 25話『夢』


ドウン! 鈍い音が響いた…。

「ちやーー!!!」
口元にむしろ不思議な微笑みを浮かべて、ちやは倒れた。柏木がちやを抱きかかえる。
「はぁああ…! なんで、なんでこんなことを! ちや、ちやー!!」
涙。柏木が涙を流している。
「お前は、お前は俺のものだって言ったじゃないか。誰が勝手に死んでいいなんて言ったよ!
 お前は俺のものだ! 俺だけのものだ! だから俺はお前をどんなことにでも利用したんだ!
 どんなことがあっても、お前は俺のものなんだから!
 そう、俺の持つ、たった一つの『本物』だから!
 俺はお前を、俺が作ったソフトを凄いねって誉めてくれたお前を、ただ喜ばせたくて。
 もっと、喜んで欲しかったから……!
 パクリブラウザのスレイプニルや、その周囲に集まるハエどもなんてどうでもいいんだ。
 スレイプニルが評価され、賞を取って、お前が喜んでくれれば、それだけで俺は!

 …はは、知ってるか? Sleipnir2をシェアウェア化して、その金が入ったら
 田舎に家でも買おうと思ってたんだぜ。前からの俺の夢でさ、そうしたら俺はお前に…」
柏木は銃口をゆっくりと自分のこめかみに押し当てた。

「お前に…の後は?」
「決まってるじゃないか、お前にプロポ…え?」
ちやが目を開けて、柏木を見上げている。
「ち、ちや! どうして…。怪我は!」
柏木はちやの胸元を大きく引き開けた。純白のブラジャーが目にまぶしい。が、そこに血の跡はない。
「や、やだ」
「やだじゃないだろ。お前……ん、なんだ?」
なんと、ブラジャーの表面で拳銃の弾頭が止まっている。ブラジャーの繊維を突き破れずに、そこで力尽きたように。
「どうなってるんだ…?」
「あ、このブラジャー。あのブタさんからもらった…」

次回、もろ肌を脱ぎ、ブラジャーを示す漢達。そして大団円。
C・H・I・Y・A 26話『ブラジャー』


C・H・I・Y・Aアナザーストーリー 26話『ブラジャー』


「ほほぉ、娘さん。あんたも会員だったのかね?」
「え、なんの話ですか?」
「実は、ワシらもじゃよ!」
SUUと戦っていた各タブブラウザ作者が、一斉にもろ肌を脱ぎ、純白のブラジャーを示した。
「防弾、防刃、対核能力に優れた、これぞタブブラウザ推奨委員会の会員証じゃ!」
「な、なにー!!」
「柏木よ、お前とやりあおうと言うのに、無防備のまま来るわけがあるまい」
「なんでブラジャーにそんな機能があるんだよ! 大体、対核能力ってなんだ」
「核の熱線を浴びると、表面の繊維が瞬時に蒸発、気体となって膜を作り、
 以後の光、熱、放射能を防ぐのじゃ。手足が蒸発しても、胸だけは安泰じゃよ」
「意味がねー!」

「…俺の八脚神馬蹴。何発かは胸にクリーンヒットしたはずだが。…お前もぷに?」
「く、悪いな、jin-ren。俺もだよ」
にやりと笑いながらグングニルもブラジャーを示す。

「は、ははは…」
力無く、柏木はぺたりと座り込む。
「やすゆき、ね、罪を償いましょう? 私も刑務所に入るから。
 もし、私が先に出てきても、ずっと待ってるから。
 そしたら、そしたら、その後は結婚しようよ」
「馬鹿だな、俺は死刑になるかも知れないんだぞ」
「もし、死刑になるようなら、すぐに後を追うから」
「馬鹿いうな。…ほんと、馬鹿だな、お前…」
「うん、私馬鹿だもん」

そして、口づけ。

次回、終局の後。
C・H・I・Y・A 『みなさん、おなにーしませんか』


C・H・I・Y・Aアナザーストーリー 『みなさん、おなにーしませんか』


後日談。
ノッチの日記。
「こうして、後味がいいんだか、悪いんだか分からない事件は、終わりを告げた。
 柏木、ドラウプニルとSUUは警察に捕まり、事情聴取を受けている。
 UHを殺したのは確実だが、Cuam氏殺害については事故だった可能性もあるとか。
 jin-renだけは逃げ出して、今指名手配中だ。x08z氏を狙うんじゃないかって、グングニルが警戒してる。
 DonutPの配布は再開されたが、しばらくしたらRAPT氏が全て引き継ぐことになる。
 Hide氏はまだ入院中だが、女として生きていくことにしたらしい。
 Crescent Moonはいまだ開発中。元々、柏木をおびき出すために、
 急遽スクリーンショットだけ作ったものだから、これからが本番らしい。
 俺はまだ通院中だが、そろそろUHの墓参りに行かないと」

ちやの日記。
「私の死体遺棄の共犯については、お咎めなしとされてしまった。
 私が罪を受けることで、やすゆきの罪を減らせばいいのに。
 やすゆきは相応の裁きを受けることになるだろうけど、
 何十年待つことになっても、私は待ってる。死刑になったら、私も死のう。

 私は、今、私にできることをやる。
 死んでしまったUHさんのことをみなが忘れないように、私とやすゆきが犯した罪を忘れないように、
 私は、DonutPのスレッドにあの書き込みを続ける。
 やすゆきが、私に頼んだあの言葉。
 あれを書いている時、私の側にやすゆきが居るのを感じられるから」


「みなさん、おなにーしませんか?」


C・H・I・Y・A 〜〜 完 〜〜





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